韓国産フィルム・ノワール登場

甘い人生 特別日本版 [DVD]

甘い人生 特別日本版 [DVD]

監督は「箪笥」をとったキム・ジウン(実は「箪笥」、怖すぎて20分くらいで幽霊が出てくる前に止めちゃったのです。それほど沢山のホラーやスリラーを観ている訳ではありませんが、怖くて観れなくなったのは、あの作品だけです)。
イ・ビョンホン主演で題名が「甘い人生」ときたからには、それなりに“甘い”要素(ロマンス)を描いた映画なのかと思って観たけれど、全然、甘くないです。いや、正直驚いた。期待を良い意味で裏切ってくれた。

裏世界で冷徹に仕事をこなす事でボスの信頼を得てきた男が、ほんの少しの心の揺らぎによって歯車が狂っていく。救いのない暗黒にどこまでも落ちていくいわゆるフィルム・ノワールもの。実に味わい深い作品になっている。飛び散る血しぶきが凄まじいので、そういうのが苦手な人は多少辛いかもしれませんが、それだけの映画ではないので大丈夫だと思う。香港からはインファナルアフェア3部作、韓国からはこの映画が出てきた。日本でも上質なノワール作品が出来たりするだろうか。出来ない気がする。それにしても、破滅へと向かう男はなぜこうも美しいのか。イ・ビョンホン、見直した。



ある春の日、風に吹かれて枝が揺れていた。それを見て弟子は師匠に尋ねた。「枝が揺れているのですか?それとも風が揺れているのですか?」。師匠は弟子が指さした方を見もせずに答えた。「揺れているのはおまえの心だ」


目を覚ました弟子が泣いている。「どうした?怖い夢でもみたか?」と師匠が訪ねると弟子は「いいえ、怖い夢ではありません」と首を振る。「それでは悲しい夢か?」と訪ねると「いいえ」と。師匠は「それではどんな夢をみたのだ?」と訪ねると弟子は低い声で答えた「とても甘い夢です…



なぜ、甘い夢をみたことで弟子は泣いたのか。その答えがこの映画のテーマである。